第5話
お泊りセット

 真田幸村の父親は、またあわてていた。

父親「あたふた。あたふた」

幸村「お父さん」

父親「あたふた。あたふた」

幸村「お父さん!」

父親「おぉ、幸村」

幸村「何やってるの?」

父親「うん。いい質問だね。お父さんは今、あたふたしていたんだよ」

幸村「どうして?」

父親「わがファミリーの領土が没収されたんだ」

幸村「えぇ!」

父親「それでこうして、なすすべもなく慌てていたというわけさ」

幸村「誰に没収されたの?」

父親「徳川家康」

幸村「うっそぉ!? 家康さん?」

父親「家康にまんまと騙された」

幸村「そんなぁ…」

父親「そこで幸村」

幸村「はい」

父親「おまえも一緒に、あたふたしてみないかい?」

幸村「いや、それじゃ解決にならないしょ。なにか手、打たないと」

父親「じつは、すでにひとつ手を打ってあるんだ」

幸村「お〜。さすがお父さん」

父親「このまま家康の言いなりになるわけにはいかない」

幸村「うん」

父親「しかしわがファミリーは弱小勢力だから、単独で家康と戦っても勝ち目はない」

幸村「そうだね」

父親「そこで、新潟県の戦国大名Uさんと同盟を結ぶことにした」

幸村「いいね」

父親「Uさんと手を組んで、家康をやっつけるのさ」

幸村「やろう!」

父親「ただ、ひとつ問題が」

幸村「なに?」

父親「Uさんが、人質を要求しているんだ」

幸村「人質?」

父親「『ホントに同盟を結ぶつもりがあるなら誠意の証として人質を差し出せ』と言ってきてるんだ」

幸村「えーっ」

父親「それで困ってるんだよ」

幸村「う〜ん。人質っていわれてもねぇ…」

父親「……」

幸村「ん? なにその目」

父親「……」

幸村「なんでこっちジーッと見てるの(汗)」

父親「……」

幸村「なにさ」

父親「……」

幸村「お、おれ?」

父親「おぉ! 幸村! おまえが人質に志願してくれるとは♪」

幸村「いや…」

父親「お父さんはすごく嬉しいよ!」

幸村「待ってよ(汗)」

父親「嬉しいときはスキップに限る」

幸村「え」

父親「じゃあ、スキップで競走だ」

幸村「あ、ちょっと」

父親「それ。負けないぞ。あはははは。あはははは」

 父はスキップで走り去った。

幸村「……」

 そこへ幸村の友人があらわれた。

友人「きみのお父さん、軽やかだね」

幸村「まあね」

友人「はい、これ」

 と、友人は包みを差し出した。

幸村「なにそれ?」

友人「お泊りセット。新潟に行くんでしょ」

幸村「あ、ありがとう(汗)。でもこれ、ふたつあるよ」

友人「うん」

幸村「ふたつもいらないよ」

友人「ひとつはおれの」

幸村「友人くんの?」

友人「心配だから」

幸村「ついて来るの?」

友人「うん」

幸村「人質だよ。すげーいじめられたりするかもよ」

友人「だからついてくんでしょ」

幸村「いじめられたら、助けてくれる?」

友人「いや、無理かも」

幸村「え (-_-;)」

友人「でも一緒にいじめられるくらいは、してあげられるよ」

幸村「あんまり嬉しくないんですけど」

友人「とかいいつつ、ちょっと嬉しいくせに」

幸村「とかいいつつ、ちょっと嬉しいけど」

友人「じゃあ、出発しようか」

幸村「うん」

 1585年、幸村は新潟県の戦国大名U(上杉景勝)のもとに人質として送り込まれた。

 このとき幸村19歳(16歳という説もある)。

 のちに「天才軍師」「日本一の勇者」と呼ばれる彼だが、歴史の表舞台にデビューするのはまだ先のこと。


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ありけん