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第16話
高氏の寝返り
西暦1333年4月。大阪府の千早城にたてこもる楠木正成と、鳥取県の船上山にたてこもる天皇は、電話で話をした。
天皇「はぁい♪」
楠木「あ、天皇さん」
天皇「武士たちをスカッと追い払ったんだって?」
楠木「えへへ。まあ」
天皇「頼もしいな〜」
楠木「英雄、目指してますから」
天皇「でさ、思ったんだけど……」
楠木「はい」
天皇「このへんでちょっと幕府と話し合ってみるって、どお?」
楠木「話し合い?」
天皇「あんまり力で屈服させても、おれの評判、悪くなるしさ」
楠木「そうですね」
天皇「1回、敵に降伏をすすめてみてもいいかな〜と思って」
楠木「じゃ、おれ、幕府さんと話し合ってみます」
天皇「たのむね〜」
楠木正成は幕府に電話をかけた。
幕府「え、話し合い?」
楠木「はい」
幕府「なんで急に?」
楠木「あんまり戦いが長引いてもアレですよね」
幕府「アレだね」
楠木「会ってゆっくり話しませんか?」
幕府「いいけど、おれたちの会合って目立つよね。記者とかバンバン来るよ」
楠木「じゃ、変装するってのはどうですか?」
幕府「お。ちょっと面白そう」
楠木「でも、変装で相手が分からなくなったら困るから、合言葉、決めときましょう」
幕府「いいよ」
楠木「コマネチ」
幕府「は?」
楠木「これ、合言葉ね。コマネチ」
幕府「えー……」
楠木「ちゃんと動きも付けるんですよ」
幕府「うそぉ、動き、あり?」
楠木「相手がコマネチ!ってやったら、自分もコマネチ!ってやるんですよ」
幕府「わかったけど、そのかわり、裏切るのなしね」
楠木「裏切り?」
幕府「相手にだけコマネチってやらして、自分はやんないのとか、なしだよ」
楠木「もちろんですよ」
幕府「待ち合わせ場所、どうする?」
楠木「どこでもいいですよ」
幕府「じゃあ、明日の夕方、篠村で」
楠木「篠村ですね、わかりました」
幕府はさっそく変装した。
幕府「どう? 似合う?」
家臣「うわ、なんですか、そのかっこう」
幕府「田中邦衛」
家臣「は?」
幕府「(唇を突き出して)……純」
家臣「……」
幕府「ね」
家臣「いや、『ね』って」
幕府「行ってきま〜す」
家臣「え〜。どこ行くんですか?」
幕府「篠村。留守番たのむね〜」
そのころ。足利高氏は……。
足利「うーむ。迷う」
部下「まだ迷ってるんですか?」
足利「幕府に味方すべきか、天皇方に寝返るべきか」
部下「今んとこ、『お腹痛い』っていう小3レベルの言い訳で引きこもってますけど、もう限界ですよ」
足利「そうだな」
部下「どっちに味方するか、そろそろハッキリしないと」
足利「私は幕府の家臣なので、普通に考えると、幕府に味方すべきなんだが……」
部下「はい」
足利「しかし幕府は落ち目だ」
部下「少数の楠木に手を焼いてますからね」
足利「かといって、今まで信頼してくれた幕府を簡単に裏切るわけにもいかない」
部下「困りましたね」
足利「よし、決めた」
部下「どうするんです?」
足利「やはり幕府に味方する」
部下「ではさっそく天皇&楠木チームを攻撃しましょう」
足利「だが、その前に……」
部下「はい」
足利「『今まで引きこもっててスイマセン』と幕府にひとこと謝っておこう」
部下「それがいいですね」
というわけで。足利高氏は幕府のいる鎌倉を訪ねた。
足利「こんにちは」
家臣「おお、これはこれは、足利さん」
足利「幕府さんはいますか?」
家臣「今、外出中なんですよ」
足利「外出中?」
家臣「はい。それで、家臣の僕が留守番してるわけでして」
足利「幕府さんは、どちらへ?」
家臣「篠村へ行きました」
足利「わかりました。篠村ですね」
ここは篠村(現在の京都府亀岡市篠町)。
足利「あ、いた。探しましたよ、幕府さん」
幕府「む。楠木め、足利さんに変装したのか。うまいな」
足利「どうしたんですか、そのかっこう」
幕府「コマネチ!」(動き付き)
足利「……」
幕府「コマネチ!」(動き付き)
足利「……」
幕府「ずるい〜。なんでやんないのさ〜」
足利「え? え?」
幕府「裏切り者ぉ〜」
足利「いや、裏切ってませんって」
幕府「裏切ったしょー」
足利「どうしようか、ちょっと迷っただけですよ」
幕府「それがもう裏切りでしょ。おればっかりにやらせて〜」
足利「今から参加しますから。今から頑張ります」
幕府「もう遅いよ。怒った。おれ、帰る」
足利「あ、ちょっと……」
幕府「さいならー」
足利「嫌われた……。こうなったら、本当に裏切ってやる」
西暦1333年4月。足利高氏は篠村で幕府に反旗をひるがえした。
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